『あおにもどる』と稚内~Galileo Galilei 原点の旅~
1.Galileo Galileiと稚内 ― 大切な何かに“もどる”ということ
北海道稚内出身のバンド”Galileo Galilei(以下、GG)”が、2025年3月に発表した楽曲『あおにもどる』。
そのミュージックビデオ(以下、MV)が、同年1月下旬、メンバーにとっての"原点"である稚内で撮影されました。
GGのメンバーたちは、それぞれの形で稚内とつながっています。
ー 生まれ、そして育ったまち。
ー 親戚が酪農業を営み、子どものころから親しみのあるまち。
ー 仲間と音楽をするため、遠距離から何度も訪れたまち。
GGがメジャーデビューし、稚内を旅立ったのは2010年。
それから15年後の2025年に発表された『あおにもどる』という楽曲のタイトル、そして稚内でMVが撮影されたことからは、彼らにとって大切な何かにもう一度立ち返るという決意が込められているように感じ取れます。
この特集ではMVに登場する撮影地を、撮影時のエピソードやオフショットとともにご紹介します。
GGが描く”あお”をたどる旅に出かけてみましょう。
Galileo Galilei
GGは北海道稚内で結成されたロックバンドです。バンドは2007年に音楽活動を開始し、当時のメンバーは全員が学生でした。2008年に開催された10代の音楽アーティスト限定の音楽コンテスト「閃光ライオット」にて、GGは約5000組の中から初代グランプリを獲得し、全国のロックファンにその名が知られました。2010年のメジャーデビュー後は,音楽の拠点を東京や札幌に移し、次世代のロックシーンを担う音楽アーティストとして音楽メディアから大きな注目を集め、特に同年代の若者から人気を得ています。その後、精力的に活動を続けていましたが、2016年にいったん休止。2022年には新体制で活動を再開し、新譜のリリースやライブなどを活発に行っています。
2025年現在、メンバーは尾崎雄貴(ボーカル・ギター)さん、岩井郁人(ギター)さん、 尾崎和樹(ドラムス)さん、岡崎真輝(ベース)さんの4人です。尾崎雄貴さんと和樹さんは兄弟で稚内出身、岡崎さんは叔父が稚内在住、岩井さんは音楽活動初期、毎週のように稚内に来ていたという、稚内とつながりの深い音楽アーティストです。
2.『あおにもどる』MV撮影地マップ
『あおにもどる』という1つの楽曲のために作られたMVは、1本ではありません。
なんと稚内市内8か所で撮影された、全8バージョンの『あおにもどる』のMVがあるのです。
1つの楽曲で8つものMVがあるのは異例ではないでしょうか。
どれも、GGにとって意味のある場所や思い出の地であり、そして今の稚内を象徴する場所です。
稚内市ではGG監修のもと、MV撮影地マップを制作しました。
撮影地の位置やアクセス、施設情報が掲載されているので、旅のガイドとして、ぜひお手元にどうぞ。
3.撮影地をめぐる - 8つの”あお”の物語
GGは3日間の稚内滞在期間で8つのバージョンのMVを撮影しました。ここからは撮影順にMVと撮影地を紹介していきます。
3-1.稚内南中学校(学校ver.)
稚内南中学校、通称「南中(なんちゅう)」は、稚内出身の尾崎兄弟が実際に通っていた中学校。撮影は学業に配慮し、生徒の下校後、夜間に実施されました。
「夜の学校って初めて入るね」と話しながら、暗い校内を興味津々に観察するメンバーたち。その雰囲気を生かすため、あえて照明を極力落とした中でMVを撮影していました。仕上がったMVからは、夜の学校の光と影のコントラストを楽しめます。
南中は学校施設なので、関係者でなければ校内に入れません。聖地巡礼の際は、校門の前から静かに楽しみましょう。
また、記念撮影などは生徒をはじめ学校関係者のプライバシーに十分配慮してください。そのほか、南稚内駅側にある急勾配の階段、通称「港階段(みなとかいだん)」を登っていくと、尾崎兄弟が毎日通った通学路を体感できるのでおすすめです。
3-2.西條稚内店(ショッピングセンターver.)
西條稚内店は尾崎兄弟が子どもの頃から家族でよく訪れていた思い出の場所です。MVの撮影は閉店後に行われました。
MVでは店内を尾崎雄貴さんが自由に歩き回り、その間にメンバーの演奏シーンが交差するという演出がされています。この演出のアイデアは、撮影前に店内をロケハンした数分の間で生まれました。
尾崎雄貴さんを滑らかに追うカメラワークがとても印象的。節分のポップが掲示されていて、季節感を感じさせるのも隠れた見どころです。
限られた撮影時間の中、一発撮りかつ繊細なカメラワークが求められたので、メンバーと撮影スタッフも緊張感を持って撮影していました。
聖地巡礼する際はMVと同じルートで店内を巡りながら、買い物を楽しんではいかがでしょうか。西條は百貨店なので、品揃えが豊富なことがわかると思います。食品、衣料品、文房具からレストランまで揃っているので、旅の途中のお買い物や休憩で立ち寄るのに最適な施設です。
3-3.ヤムワッカナイ温泉 港のゆ(温泉ver.)
稚内副港市場は、物産の購入や飲食ができるほか、キッズスペースもあり、さらに温泉も楽しめる稚内の複合観光施設です。その2階にある温泉「港のゆ」でMVが撮影されました。
撮影は営業終了後の22時から、男湯で行われました。湯けむりの中、大浴場で演奏するメンバーたちは汗だくに。一方、露天風呂では裸足の足(温泉なので、靴を履くことは不衛生とのメンバーの判断)が、1月の寒さで凍りつきそうになりながらも、笑いながら撮影していました。また、MVの中では、掃除中の職員さんの姿がさりげなく映り込んでいます。これは、普段の日常の中で演奏したいというメンバーのアイデアです。ぜひ、そのシーンも探してみてください。
ちなみに、稚内福港市場ができたのは2007年。GGの音楽活動が”擦れたタイヤだらけのガレージ”で始まったのと同時期です。当時学生だった尾崎雄貴さんは、学校の行事で施設内の波止場横丁にあったカレー屋さんで研修をしたこともあったそうです。
港のゆのフロントカウンターにはGGメンバーのサインも飾られています。こちらもぜひチェックしてみてください。
3-4.宗谷ふれあい公園スノーランド(雪上車ver.)
宗谷ふれあい公園スノーランドは、毎年2月に開催されるロングランイベント。そのイベントで運行される赤い雪上車を用いてMVが撮影されました。「赤い車」はGGの楽曲や世界観にとって重要なキーワードになっていて、楽曲の歌詞やMV、CDジャケットなどにも登場します。赤い雪上車が稚内にあることを知ったメンバーによって、急きょ撮影が決まりました。
撮影当日、早朝の稚内の空はこの時期としては奇跡的な快晴で、まさに“あお”空。しかし、放射冷却の影響で気温がマイナス15度にまで冷え込み、あまりの寒さで雪上車のエンジンが不具合を起こすハプニングも発生しました。しかし、スノーランドの職員の皆さんはすぐさま復旧作業を行うなど、とても尽力していただきました。メンバーたちは撮影をサポートしてくれた職員の統率の取れた動きに、「格好良かった」と感激していました。
「宗谷ふれあい公園スノーランド」の雪上車は、凍った大沼の上を走行するため、何も遮るもののない白銀の大雪原を楽しめます。その風景は圧巻です。そのほか、歩くスキーやファットバイク、プロの自然ガイド付きのスノーシューツアーなど、冬の稚内を体感できるアクティビティが盛りだくさんです。
3-5.こまどりスキー場(スキーver.)
こまどりスキー場はアクセス抜群の住宅街にあるスキー場。
スキーを滑りながら演奏したいとのメンバーの意向で、撮影地として選定されました。
通常スキーは両手にストックを持って滑るのですが、メンバーがストックなしで滑っているのは、もともと楽器を演奏しながら滑る予定だったためです。安全面から断念したので、ストックなしで滑るMVに。夕陽に照らされる市街地を背景に、メンバーがスキーを楽しむ様子は、楽しい思い出を振り返るホームビデオのようで、和やかな気持ちになりますね。
なお、ロッジ内にはGGメンバーの大きなサインが飾られています。これは使用されなくなった料金表の裏だそう。スキー場は冬季のみの営業ですが、夏季の一部期間はパークゴルフ場になっていて、ロッジも開館しています。営業準備のため休館している期間もありますので、注意してください。
3-6.みどりスポーツパーク(カーリングver.)
みどりスポーツパークは稚内が誇るスポーツ複合施設。MVで使用されたカーリングホールは、2021年北京オリンピックのカーリング女子とミックスダブルスの日本代表決定戦が開催されました。そして2025年9月には、2026年ミラノ・コルティナオリンピックの日本代表決定戦の開催地にもなっています。
MV撮影時には、GGのメンバーも本物のカーリングシューズを履いて撮影。カーリングシューズは片方が氷上で滑る構造になっていて、メンバーたちはあまりの滑り具合に驚いていました。ここでは、カーリング体験もできるので、実際にリンクに立ってみてはいかがでしょう。
ところで、メンバー内では、カーリングのハウスの円がGGのアルバム「MANSTER」「MANTRAL」「BLUE」(3部作)のジャケットに描かれている円に似ていると話題になったようです。
※カーリング場はアイス張り替えのため、一定期間使用が休止されることがあるので、ご注意ください。
3-7.稚内市青少年科学館(科学館ver.)
稚内市青少年科学館は、尾崎兄弟が幼少期によく訪れた場所。特に学校の遠足でプラネタリウムを見て感動した記憶が残っているそうです。
プラネタリウムで使われている映写機は、北海道内で最も古いものです。撮影後、プラネタリウムの操作盤の説明を受けながら操作してみたり、併設されたノシャップ寒流水族館でアザラシの餌やりなどを行って楽しんでいました。
アザラシの餌やりは通常でも体験できます。また、アザラシの赤ちゃんが生まれた際には、ぬいぐるみのような愛らしい姿を見ることができるほか、ペンギンのお食事の様子やアザラシのジャンプなどの得意技の披露も人気です。そのほか、展示されている魚たちは、食用としてもお馴染みのホッケやソイ、カレイなど、北の冷たい海でたくましく生きる “美味しい”魚たちです。食卓に並ぶ魚が実際に泳ぐ姿が見られる、子どもから大人まで楽しめる施設です。
3-8.中央水産(冷凍室ver.)
中央水産(株)は昭和48年創業、稚内を代表する水産加工会社です。
実際に使用している冷凍室を借りることができ、MVが撮影されました。冷凍庫の温度はなんとマイナス24度以下。機材にも霜が付くほどの寒さで、機材トラブルが何度も発生。メンバーの体力も限界寸前の中、ラスト1テイクで奇跡的に撮影が成功しました。
MVで登場する冷凍室は、建物正面の左手側、「冷蔵庫」と書かれた建物です。聖地巡礼する際は、私有地なので許可なく敷地内に入らないようお願いします。同社には姫ほっけやアヒージョなど、「稚内ブランド」として地域がおすすめできる商品もたくさんあります。お土産にいかがでしょう。
4.稚内を”聖地巡礼”するファンたち
MV公開以降、全国から訪れるGGファンの姿が見られるようになりました。SNSには、MVの構図を再現した写真や、各撮影地を訪れた感想の言葉も!
「稚内で曲の背景を肌で感じたい」
「GGが見ていた風景に立ちたい」
稚内でGGの"あお"を探す旅が、ファンの間で広がっています。
5.あなたの”あお”に出会う旅へ
2016年に一度活動を終えたGGが、2022年に再び歩みはじめ、発表した『あおにもどる』。
『あおにもどる』が描く風景は、どこか懐かしくも、稚内の今のそのものです。
MVを見て稚内のまちを歩いたとき、はじめて訪れるまちなのに”もどってきた”と思えるかもしれません。
ぜひ、GGの”あお”を、あなた自身の”あお”として感じるために稚内に訪れてはいかがでしょうか。